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黒字企業の4割でROEが株主資本コストに届かない——上場2,252社を比較|2026年8月版

公開日: 2026-08-09更新日: 2026-08-09執筆・算定: 竹内 真二

全上場企業をKeでランキングしてみたら見えたこと|2026年8月版では、Keの高さの背景にある市場連動リスクや財務レバレッジを見てきました。ただし、Keの大小だけでは、企業が株主資本に求められる収益性を実現できているかまでは分かりません。Keは株主の要求収益率の推計値であり、企業の収益力そのものではないからです。 そこで今回は、KeとROE(自己資本利益率)を比較します。時価総額100億円以上の国内上場企業2,252社について、Keと直近12カ月のROEを突き合わせました。

集計対象
時価総額100億円以上の国内上場企業2,252社
除外対象
銀行・証券・保険等の金融機関、REIT、自己資本がゼロ以下の企業
データ基準日
2026年8月9日
ROEの定義
LTM親会社株主帰属利益 ÷ 期末自己資本(beluuga.aiの企業ページ表示と同一の定義、期首期末平均ではありません)
黒字企業
LTM親会社株主に帰属する当期純利益がプラスの企業2,113社
うちKeがROEを上回る企業
834社(39.5%)

黒字企業の4割近くで、ROEがKeを下回った

対象企業のうち、LTMの親会社株主に帰属する当期純利益が黒字だった企業は2,113社でした。そのうち834社、39.5%でROEがKeを下回りました。会計上は利益を計上していても、自己資本に対する収益性が、推計された株主の要求収益率に達していない企業が、対象となった黒字企業の4割近くに上ります。 乖離幅で見ると、2ポイント未満の僅差にとどまる企業が314社(37.6%)を占め、推計誤差の範囲内とも解釈できる企業が相当数含まれます。一方、10ポイント以上の大幅な乖離は24社(2.9%)です。「4割」はこの両者を一律に1社として数えた数字である点にご留意ください。

KeがROEを上回る幅の大きい上位100社(黒字企業、2026年8月9日時点)
順位コード企業名業種KeROEKe−ROE
15202日本板硝子ガラス・土石製品43.08%2.93%40.2pt
26523PHCホールディングス電気機器20.85%0.30%20.5pt
36444サンデン機械26.42%7.23%19.2pt
46440JUKI機械21.95%4.31%17.6pt
56962大真空電気機器18.00%1.08%16.9pt
66412平和機械19.84%4.69%15.2pt
77294ヨロズ輸送用機器18.25%3.83%14.4pt
86798SMK電気機器13.81%0.18%13.6pt
99130共栄タンカー海運業14.70%1.59%13.1pt
105852アーレスティ非鉄金属18.98%6.41%12.6pt
116955FDK電気機器16.17%3.92%12.2pt
123863日本製紙パルプ・紙14.55%2.31%12.2pt
136832アオイ電子電気機器12.04%0.16%11.9pt
144676フジ・メディア・ホールディングス情報・通信業12.96%1.19%11.8pt
157915NISSHAその他製品12.68%1.15%11.5pt
164902コニカミノルタ電気機器17.07%5.65%11.4pt
179158シーユーシーサービス業19.85%8.54%11.3pt
186997日本ケミコン電気機器14.98%3.79%11.2pt
196310井関農機機械14.44%3.63%10.8pt
204819デジタルガレージ情報・通信業12.46%1.70%10.8pt
218086ニプロ精密機器15.67%4.92%10.7pt
229115明海グループ海運業18.39%8.09%10.3pt
232162nms ホールディングスサービス業16.34%6.13%10.2pt
248897MIRARTHホールディングス不動産業15.80%5.67%10.1pt
253778さくらインターネット情報・通信業10.63%0.72%9.9pt
265074テスホールディングス建設業11.75%1.87%9.9pt
276222島精機製作所機械10.71%1.04%9.7pt
285938LIXIL金属製品10.82%1.22%9.6pt
299603エイチ・アイ・エスサービス業17.44%7.89%9.6pt
305702大紀アルミニウム工業所非鉄金属14.32%4.82%9.5pt
316262PEGASUS機械10.46%0.99%9.5pt
326882三社電機製作所電気機器10.95%1.53%9.4pt
335915駒井ハルテック金属製品10.37%0.96%9.4pt
347220武蔵精密工業輸送用機器10.44%1.03%9.4pt
356998日本タングステン電気機器11.41%2.03%9.4pt
368931和田興産不動産業15.49%6.11%9.4pt
374553東和薬品医薬品12.02%2.95%9.1pt
383405クラレ化学9.49%0.44%9.1pt
399468KADOKAWA情報・通信業9.51%0.52%9.0pt
403632グリーホールディングス情報・通信業10.55%1.57%9.0pt
413668コロプラ情報・通信業9.47%0.51%9.0pt
429268オプティマスグループ卸売業14.79%5.87%8.9pt
434433ヒト・コミュニケーションズ・ホールディングス情報・通信業12.50%3.80%8.7pt
449204スカイマーク空運業10.00%1.31%8.7pt
456316丸山製作所機械13.04%4.37%8.7pt
466675サクサ電気機器13.01%4.47%8.5pt
473105日清紡ホールディングス電気機器12.36%3.84%8.5pt
484651サニックスホールディングスサービス業12.26%3.82%8.4pt
495381マイポックスガラス・土石製品14.06%5.65%8.4pt
502485ティアサービス業12.73%4.32%8.4pt
512445タカミヤサービス業15.85%7.52%8.3pt
523434アルファCo金属製品11.90%3.58%8.3pt
537261マツダ輸送用機器10.16%1.84%8.3pt
546473ジェイテクト機械9.75%1.51%8.2pt
559470学研ホールディングス情報・通信業14.20%6.01%8.2pt
567743シード精密機器14.02%5.90%8.1pt
573765ガンホー・オンライン・エンターテイメント情報・通信業9.41%1.28%8.1pt
589601松竹情報・通信業11.34%3.26%8.1pt
596104芝浦機械機械8.93%0.87%8.1pt
606393油研工業機械12.48%4.45%8.0pt
614579ラクオリア創薬医薬品8.67%0.66%8.0pt
624446Link-Uグループ情報・通信業10.06%2.06%8.0pt
637888三光合成化学10.17%2.18%8.0pt
647211三菱自動車工業輸送用機器9.05%1.09%8.0pt
654409東邦化学工業化学14.15%6.36%7.8pt
669166GENDAサービス業12.14%4.36%7.8pt
674235ウルトラファブリックス・ホールディングス化学13.13%5.35%7.8pt
689249日本エコシステムサービス業10.44%2.72%7.7pt
697962キングジムその他製品9.64%2.01%7.6pt
704538扶桑薬品工業医薬品13.33%5.74%7.6pt
717600日本エム・ディ・エム精密機器8.61%1.04%7.6pt
724839WOWOW情報・通信業9.41%1.86%7.5pt
735269日本コンクリート工業ガラス・土石製品8.98%1.50%7.5pt
748089ナイス卸売業11.75%4.35%7.4pt
757779CYBERDYNE精密機器7.79%0.39%7.4pt
767751キヤノン電気機器11.09%3.69%7.4pt
776918アバールデータ電気機器10.12%2.73%7.4pt
786445ジャノメ機械9.03%1.70%7.3pt
797952河合楽器製作所その他製品9.73%2.44%7.3pt
807245大同メタル工業輸送用機器12.63%5.35%7.3pt
816986双葉電子工業電気機器10.22%3.01%7.2pt
828904AVANTIA不動産業11.97%4.77%7.2pt
836645オムロン電気機器10.84%3.69%7.1pt
844188三菱ケミカルグループ化学7.79%0.67%7.1pt
856584三櫻工業輸送用機器10.56%3.44%7.1pt
866966三井ハイテック電気機器12.83%5.76%7.1pt
874996クミアイ化学工業化学9.89%2.82%7.1pt
887238曙ブレーキ工業輸送用機器10.71%3.65%7.1pt
893002グンゼ繊維製品7.49%0.46%7.0pt
903678メディアドゥ情報・通信業13.05%6.07%7.0pt
914169ENECHANGE情報・通信業9.66%2.74%6.9pt
926965浜松ホトニクス電気機器10.81%3.99%6.8pt
934005住友化学化学12.86%6.05%6.8pt
942790ナフコ小売業6.93%0.15%6.8pt
954569杏林製薬医薬品9.19%2.42%6.8pt
968219青山商事小売業10.67%3.90%6.8pt
978999グランディハウス不動産業10.36%3.64%6.7pt
986140旭ダイヤモンド工業機械9.95%3.23%6.7pt
997218田中精密工業輸送用機器11.21%4.60%6.6pt
1006324ハーモニック・ドライブ・システムズ機械8.59%2.00%6.6pt

全社について自己資本がプラスであることを確認済みです。

ここでは上位100社を掲載しています。101位以降を含む全834社について、Keは無料デモにご登録いただくとログイン後の「ランキング」画面で全社を一覧・検索でき、ROEとの比較は各企業のプロフィールページでご確認いただけます。

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日本板硝子はROEとKeの差が最大

前回のKeランキングで4位だった日本板硝子は、今回、Ke−ROEの乖離が最も大きい企業となりました。Keは43.08%で、その高さにはD/E=12.4倍という財務レバレッジが影響しています。一方、LTMのROEは2.93%で、乖離は40.2ポイントです。 自己資本が薄い企業では、高いD/EがKeを押し上げる一方、同じ薄い自己資本がROEの分母にもなるため、両指標が同時に極端な値になりやすい構造があります。乖離の大きさは、収益力そのものの差だけでなく、この資本構成の影響を強く受けている可能性があります。

国内上場約4,200社を横断分析(本分析の対象は上記の2,252社です)
beluuga.aiでは、企業ごとのKe・ROE・財務推移、Comps、株価動向を一画面で確認できます。無料デモで実際の分析画面をお試しください。

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Keの算定方法

Keの算定にはCAPM(Ke = Rf + β × ERP)を用いています。Rfは10年国債利回り(2.80%)、ERPはDamodaran日本株ERP(5.14%、年次更新)です。βは対TOPIX・週次2年間のOLS回帰でR²が0.30以上の企業は自社の実測値を、それ未満の企業は同業種のDamodaran業種β(アンレバード)を対象企業自身のD/E(有利子負債の簿価÷時価総額)と法定実効税率(30.62%)でHamada式(βL=βU×{1+(1−T)×D/E})により再レバレッジした値を採用しています(負債のβはゼロと仮定)。 対象834社のうち、自社実測βを採用しているのは184社(22.1%)、業種β再レバー値を採用しているのは649社(77.8%)、残る1社は業種中央値ベースの代替方式です。乖離が大きい企業ほど業種β再レバー方式に集中する傾向があり、乖離10ポイント以上の24社は全てこの方式です。日本板硝子のKe=43.08%も、業種平均のアンレバードβ(0.82)とD/E=12.4倍のリレバーから機械的に導かれた値であり、自社の実測データに基づくものではありません。D/Eがこれほど高い領域では、Hamada式が前提とする負債コストの安定性などの仮定自体が理論的に成立しにくくなるため、この種の値は精密な測定値ではなく、業種リスクに極端な財務レバレッジを掛けた一点推計として読む必要があります。 この一点推計と、その後のPBRや株価の変化との関係を時系列で検証できるだけの履歴データ(β・市場レートの公式スナップショットは2026年3月以降のみ)は現時点でありません。今回のランキングは、前提を変えた場合の感応度分析や時系列検証を行ったものではなく、現時点の一点推計に基づくスクリーニングです。

この比較は「将来の要求値」と「過去1年間の実績」の比較

Keは将来に対する株主の要求収益率の推計値、今回使用したROEは直近1年間の会計実績であり、両者は時間軸が異なります。理論的には、ROEがKeを下回る状態が続くとPBRに下押し圧力がかかります(Gordon成長モデル: PBR=(ROE−g)/(Ke−g))が、これは数式が示す含意であり、今回の単年度の横断集計そのものがこの関係を実証したわけではありません。より長期的な評価には、複数年平均ROEや予想ROE、利益の持続性なども併せて見る必要があります。 東証は2023年3月、上場企業に「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」を要請し、プライム市場の約半数がROE8%未満・PBR1倍割れであることを問題視しました。2026年4月には、この要請を「経営資源の適切な配分」を中心とした内容にアップデートしています。ROEとKeの関係は、こうした形で投資家・当局からも注目されています。

データの前提

  • 集計対象: 時価総額100億円以上の国内上場企業2,252社
  • 除外: 銀行・証券・保険等の金融機関、REIT、自己資本がゼロ以下の企業
  • データ基準日: 2026年8月9日
  • ROEの定義: LTM親会社株主帰属利益 ÷ 期末自己資本(beluuga.aiの企業ページ表示と同一の定義)
  • Keの算定方法: 本文「Keの算定方法」参照
  • 決算期変更企業について個別の調整は行っていません
  • 参考: 東京証券取引所「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応等に関するお願いについて」(2023年3月31日)/日本取引所グループ「『資本コストや株価を意識した経営』に関する要請のアップデートについて」(2026年4月28日)
  • 出典・算定: beluuga.ai

関連記事: 企業価値(EV)がマイナスの上場企業ランキング(資本効率の観点から現金・投資有価証券の保有状況を横断集計)

執筆・算定: 竹内 真二

ベルーガエーアイ株式会社 創業者・代表取締役。1998年よりM&A業務に従事。リーマン・ブラザーズ、モルガン・スタンレー(東京及びニューヨーク)、自身創業のPEファンド等での実務経験をもとにbeluuga.aiを開発。

ROEがKeを上回っているだけで、その企業を直ちに「優良企業」と評価できるわけではありません。特に高ROE企業については、利益の持続性に加え、自己資本が過度に小さくなっていないかを確認する必要があります。 データ基準日: 2026年8月9日。算定方法・除外条件は上記「データの前提」のとおりです。出典: beluuga.ai。
更新履歴: 2026年8月公開。
本記事は特定の企業への投資を推奨するものではなく、投資判断の根拠となるものではありません。個別の投資判断は自己の責任において行ってください。

国内上場約4,200社を横断分析
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