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株主資本コストに届いていない会社、届いている会社|2026年8月版

公開日: 2026-08-09更新日: 2026-08-09執筆・算定: 竹内 真二

前回、全上場企業をKeでランキングし、Keの高さの背景にある市場連動リスクや財務レバレッジを見てきました。ただし、Keの大小だけでは、企業が株主資本に求められる収益性を実現できているかまでは分かりません。Keは株主の要求収益率の推計値であり、企業の収益力そのものではないからです。 そこで今回は、KeとROE(自己資本利益率)を比較します。ROEは、企業が自己資本を使ってどれだけ会計上の利益を生み出したかを示す指標です。時価総額100億円以上の国内上場企業2,253社について、Keと直近12カ月のROEを突き合わせました。

集計対象
時価総額100億円以上の国内上場企業2,253社
除外対象
銀行・証券・保険等の金融機関、REIT、自己資本がゼロ以下の企業
データ基準日
2026年8月9日
ROEの定義
LTM親会社株主帰属利益 ÷ 期末自己資本(beluuga.aiの企業ページ表示と同一の定義、期首期末平均ではありません)
黒字企業
LTM親会社株主に帰属する当期純利益がプラスの企業2,122社
うちKeがROEを上回る企業
827社(39.0%)

黒字企業の4割近くで、ROEがKeを下回った

対象企業のうち、LTMの親会社株主に帰属する当期純利益が黒字だった企業は2,122社でした。そのうち827社、39.0%でROEがKeを下回りました。会計上は利益を計上していても、自己資本に対する収益性が、推計された株主の要求収益率に達していない企業が、対象となった黒字企業の4割近くに上ります。 ただし、これは直近1年間の実績に基づく判定です。一時的な減益や特別損失によってROEが低下している企業と、構造的に低収益な企業は区別して見る必要があります。

Ke−ROE乖離の大きい上位100社(黒字企業、2026年8月9日時点)
順位コード企業名業種KeROE乖離
15202日本板硝子ガラス・土石製品43.08%2.93%-40.2pt
26523PHCホールディングス電気機器20.85%0.30%-20.5pt
36444サンデン機械26.42%7.78%-18.6pt
46440JUKI機械21.95%4.29%-17.7pt
56962大真空電気機器18.00%1.08%-16.9pt
66412平和機械19.84%4.69%-15.2pt
77294ヨロズ輸送用機器18.25%3.83%-14.4pt
86798SMK電気機器13.81%0.18%-13.6pt
99130共栄タンカー海運業14.70%1.59%-13.1pt
105852アーレスティ非鉄金属18.98%6.41%-12.6pt
116955FDK電気機器16.17%3.92%-12.2pt
123863日本製紙パルプ・紙14.55%2.31%-12.2pt
136832アオイ電子電気機器12.04%0.16%-11.9pt
144676フジ・メディア・ホールディングス情報・通信業12.96%1.19%-11.8pt
157915NISSHAその他製品12.68%1.16%-11.5pt
164902コニカミノルタ電気機器17.07%5.65%-11.4pt
179158シーユーシーサービス業19.85%8.54%-11.3pt
186997日本ケミコン電気機器14.98%3.79%-11.2pt
194819デジタルガレージ情報・通信業12.46%1.70%-10.8pt
206310井関農機機械14.44%3.70%-10.7pt
218086ニプロ精密機器15.67%4.92%-10.7pt
229115明海グループ海運業18.39%8.09%-10.3pt
232162nms ホールディングスサービス業16.34%6.13%-10.2pt
248897MIRARTHホールディングス不動産業15.80%5.67%-10.1pt
253778さくらインターネット情報・通信業10.63%0.72%-9.9pt
266222島精機製作所機械10.71%1.04%-9.7pt
275938LIXIL金属製品10.82%1.22%-9.6pt
285074テスホールディングス建設業11.75%2.17%-9.6pt
295702大紀アルミニウム工業所非鉄金属14.32%4.82%-9.5pt
306262PEGASUS機械10.46%0.99%-9.5pt
316882三社電機製作所電気機器10.95%1.53%-9.4pt
325915駒井ハルテック金属製品10.37%0.96%-9.4pt
337220武蔵精密工業輸送用機器10.44%1.03%-9.4pt
346998日本タングステン電気機器11.41%2.03%-9.4pt
358931和田興産不動産業15.49%6.14%-9.3pt
364553東和薬品医薬品12.02%2.95%-9.1pt
373405クラレ化学9.49%0.44%-9.1pt
389468KADOKAWA情報・通信業9.51%0.52%-9.0pt
393668コロプラ情報・通信業9.47%0.50%-9.0pt
403632グリーホールディングス情報・通信業10.55%1.58%-9.0pt
419603エイチ・アイ・エスサービス業17.44%8.50%-8.9pt
429268オプティマスグループ卸売業14.79%5.87%-8.9pt
434433ヒト・コミュニケーションズ・ホールディングス情報・通信業12.50%3.74%-8.8pt
449204スカイマーク空運業10.00%1.31%-8.7pt
456675サクサ電気機器13.01%4.47%-8.5pt
466316丸山製作所機械13.04%4.54%-8.5pt
474651サニックスホールディングスサービス業12.26%3.82%-8.4pt
485381マイポックスガラス・土石製品14.06%5.65%-8.4pt
492445タカミヤサービス業15.85%7.52%-8.3pt
503434アルファCo金属製品11.90%3.58%-8.3pt
513105日清紡ホールディングス電気機器12.36%4.04%-8.3pt
527261マツダ輸送用機器10.16%1.84%-8.3pt
536473ジェイテクト機械9.75%1.51%-8.2pt
542485ティアサービス業12.73%4.54%-8.2pt
553765ガンホー・オンライン・エンターテイメント情報・通信業9.41%1.23%-8.2pt
569601松竹情報・通信業11.34%3.18%-8.2pt
577743シード精密機器14.02%5.90%-8.1pt
586104芝浦機械機械8.93%0.87%-8.1pt
599470学研ホールディングス情報・通信業14.20%6.16%-8.0pt
606393油研工業機械12.48%4.45%-8.0pt
617888三光合成化学10.17%2.18%-8.0pt
627211三菱自動車工業輸送用機器9.05%1.09%-8.0pt
634446Link-Uグループ情報・通信業10.06%2.16%-7.9pt
644579ラクオリア創薬医薬品8.67%0.77%-7.9pt
654235ウルトラファブリックス・ホールディングス化学13.13%5.32%-7.8pt
664409東邦化学工業化学14.15%6.36%-7.8pt
679166GENDAサービス業12.14%4.39%-7.8pt
689249日本エコシステムサービス業10.44%2.76%-7.7pt
697962キングジムその他製品9.64%2.01%-7.6pt
704538扶桑薬品工業医薬品13.33%5.74%-7.6pt
717600日本エム・ディ・エム精密機器8.61%1.04%-7.6pt
724839WOWOW情報・通信業9.41%1.86%-7.5pt
735269日本コンクリート工業ガラス・土石製品8.98%1.50%-7.5pt
748089ナイス卸売業11.75%4.35%-7.4pt
757779CYBERDYNE精密機器7.79%0.39%-7.4pt
766918アバールデータ電気機器10.12%2.73%-7.4pt
776445ジャノメ機械9.03%1.70%-7.3pt
787952河合楽器製作所その他製品9.73%2.44%-7.3pt
797245大同メタル工業輸送用機器12.63%5.35%-7.3pt
808904AVANTIA不動産業11.97%4.74%-7.2pt
816986双葉電子工業電気機器10.22%3.01%-7.2pt
826645オムロン電気機器10.84%3.69%-7.1pt
834188三菱ケミカルグループ化学7.79%0.67%-7.1pt
846584三櫻工業輸送用機器10.56%3.44%-7.1pt
853678メディアドゥ情報・通信業13.05%5.94%-7.1pt
867238曙ブレーキ工業輸送用機器10.71%3.65%-7.1pt
873002グンゼ繊維製品7.49%0.46%-7.0pt
884169ENECHANGE情報・通信業9.66%2.74%-6.9pt
894996クミアイ化学工業化学9.89%2.99%-6.9pt
906966三井ハイテック電気機器12.83%5.98%-6.9pt
916965浜松ホトニクス電気機器10.81%3.98%-6.8pt
924005住友化学化学12.86%6.05%-6.8pt
932790ナフコ小売業6.93%0.15%-6.8pt
944569杏林製薬医薬品9.19%2.42%-6.8pt
958219青山商事小売業10.67%3.90%-6.8pt
968999グランディハウス不動産業10.36%3.64%-6.7pt
976140旭ダイヤモンド工業機械9.95%3.23%-6.7pt
987218田中精密工業輸送用機器11.21%4.60%-6.6pt
996324ハーモニック・ドライブ・システムズ機械8.59%2.00%-6.6pt
1004998フマキラー化学11.06%4.50%-6.6pt

全社について自己資本がプラスであること、および自己資本/時価総額比が12%〜508%台であることを確認済みです。

ここでは上位100社を掲載しています。101位以降を含む全827社について、Keは無料デモにご登録いただくとログイン後の「ランキング」画面で全社を一覧・検索でき、ROEとの比較は各企業のプロフィールページでご確認いただけます。

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日本板硝子はROEとKeの差が最大

前回のKeランキングで4位だった日本板硝子は、今回、Ke−ROEの乖離が最も大きい企業となりました。Keは43.08%で、その高さにはD/E=12.4倍という財務レバレッジが影響しています。一方、LTMのROEは2.93%で、乖離は40.2ポイントです。 もっとも、この1年間の数値だけで、将来も同じ状態が続くとは断定できません。今後の収益改善見通しも併せて見る必要があります。

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ROEがKeを大きく上回った会社もある

一方、LTMのROEがKeを大きく上回った企業もあります。KeePer技研(Ke=8.50%、ROE=51.98%)、ANYCOLOR(Ke=9.41%、ROE=52.24%)、令和アカウンティング・ホールディングス(Ke=8.43%、ROE=53.85%)などは、いずれも直近4年間増収増益が続き、自己資本も積み上がっています。少なくとも今回のLTM実績では、会計上の自己資本収益性が、現在のKeを大幅に上回りました。 なお、極端に高いROEには注意が必要な場合もあります。過去の損失で自己資本が大きく減少した会社が直近で黒字回復すると、薄い自己資本を分母にROEが跳ね上がることがあるためです。今回挙げた3社はいずれも自己資本が安定的に増加している会社を確認して選んでいます。

この比較は「将来の要求値」と「過去1年間の実績」の比較

KeとROEは、性質と時間軸が異なる数字です。Keは将来に対する株主の要求収益率を推計したものである一方、今回使用したROEは直近1年間の会計実績です。今回のランキングは、将来の企業価値創造を断定するものではなく、現時点で追加分析が必要な企業を見つけるためのスクリーニングとして捉えるべきです。より長期的な評価には、複数年平均ROEや予想ROE、利益の持続性なども併せて見る必要があります。

データの前提

  • 集計対象: 時価総額100億円以上の国内上場企業2,253社
  • 除外: 銀行・証券・保険等の金融機関、REIT、自己資本がゼロ以下の企業
  • データ基準日: 2026年8月9日
  • ROEの定義: LTM親会社株主帰属利益 ÷ 期末自己資本(beluuga.aiの企業ページ表示と同一の定義)
  • 決算期変更企業について個別の調整は行っていません
  • 出典・算定: beluuga.ai

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執筆・算定: 竹内 真二

ベルーガエーアイ株式会社 創業者・代表取締役。1998年よりM&A業務に従事。リーマン・ブラザーズ、モルガン・スタンレー(東京及びニューヨーク)、自身創業のPEファンド等での実務経験をもとにbeluuga.aiを開発。

今回の集計では、LTMのROEがKeを下回る企業が、対象となった黒字企業の39.0%を占めました。ただし、単年度のROE−Keだけで企業の優劣を決めることはできません。Keは一定の前提に基づく推計値ですが、ROEと組み合わせることで、企業が株主資本に求められる収益性をどの程度実現しているかを考える一つの基準になります。 ROEがKeを上回っているだけで、その企業を直ちに「優良企業」と評価できるわけではありません。特に高ROE企業については、利益の持続性に加え、自己資本が過度に小さくなっていないかを確認する必要があります。 データ基準日: 2026年8月9日。算定方法・除外条件は上記「データの前提」のとおりです。出典: beluuga.ai。
更新履歴: 2026年8月公開。
本記事は特定の企業への投資を推奨するものではなく、投資判断の根拠となるものではありません。個別の投資判断は自己の責任において行ってください。

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